「夜神くん、なにか甘いものでも、」
「いや僕はいいよ竜崎、今は遠慮しとく。」
「そうですか、残念です。しかし糖分を摂ったほうが円滑に頭が働きますよ、」
「ありがとう。でも大丈夫だよ竜崎。
僕は竜崎みたく過度に糖分を摂らなくても頭はちゃんと働くからね。」
「夜神くん、それはそれは一体どういう、」
「そのままの意味だよ。僕は竜崎のように糖分に頼らなくても頭をちゃんと働かせることができるってことさ。やだなあ、竜崎。ちゃんと僕の話聞こえてた、」
「ええ、夜神くん。わたしはちゃんと夜神くんの話が聞こえています。
だから夜神くんの言いたいことは理解できました。しかし…」
「そう。それはよかったよ。
けれど少し集中力が切れたみたいだ。さあ。好きなだけ糖分を摂ってきたらいいよ。」
「…そうですね。ありがとうございます、夜神くん。(ああ、こいつ一回死ねばいいのに。)」

2006/11/26 吐き気のする・Lと月



頭の中の様々な情報を組み立てて自分でも驚くような素晴らしい推理が出来たときに決まって吐き気を催す癖をわたしは幼い頃から持っていました。私のその行為を見ていた周囲の人間はただ私の具合が悪いのだろうとしか思っていなかったようですが当の私は具合が悪いどころか一番に頭は冴えて恍惚とした気持ちが胸をぎゅうぎゅうと締め付けているのでした。そうです。私は通常の人間が汚物を吐き出す行為によって自分の非凡な才能を知り、またそれを思い知ることによって歓喜を感じていたのです。
口内で思い切り堪能した菓子たちを無残にも汚物として戻してしまうのはいくらか勿体無いなどと思いますがそれでも簡単に、ごく簡単に私は吐き出してしまうのです。つまりは吐き出す瞬間の私は普段では考えられないほどに菓子への執着が消え吐く行為にのみ意識を集中させているのです。ああ、こんなこと一体誰が想像できたでしょう。
きっとこの話を聞いた人間はひどく驚きそして私の性癖を疑うかもしれませんがそれでも私はなにひとつ残念な気持ちを抱くことはないのです。だってこれは私が私であると体感のできるたったのひとつの行為で他の人間が私の代わりに行うことなんてできないのですから。ええ。そうなのです。私は吐き出す行為によって初めて自分の存在の理由や生きている意味を知ったと言っても過言ではないのです。

2006/12/27 心中 L