白い制服の袖からにょっきりと生えた沖田の白い腕を見て山崎はぎょっとした。毎日飽きるくらいに太陽の光を浴びているはずのそれはしかし女のように真白くて今にも折れてしまいそうに頼りない。ぽっきりといきそうな左手首に巻かれている真黒いプラスチックの腕時計がまるで鉛のように重く見えた。 「沖田さん、」 なんとなくたまらない気持ちになって山崎は沖田の名前を呼んだ。炎天下、川沿いの砂利道をじりじり太陽に焼かれるままに山崎の半歩斜め前をコンビニで買った棒アイスをくわえながらだるそうに歩いていた沖田が振り向く。なんでィ、山崎。大儀そうにそう言った沖田は心底やる気のない目をしていたが頬は明るいままで山崎は安堵した。や、ちょっと呼んでみただけです、すみません。気の抜けた半笑いの顔でそう返すと死ねと沖田に足蹴にされた。 どうしてそんな気持ちになったのか説明のしようがないがなぜか瞬きをした次の瞬間自分の目の前から沖田が消えてしまうようなそんな気持ちに山崎はなった。ある日突然、もしくは今この瞬間にでも。 「長生きしてくださいね、」 「なに、突然、」 「なんとなく。ね、長生きしてくださいね、」 「…山崎に言われなくとも。」 山崎の前を行く沖田は相変わらず棒アイスをなめている。幾分か小さく溶けた薄い水色のそれが涼しい沖田の横顔にとても似合うなあと山崎は自分で気持ち悪いと思いながらそう思った。それでもやっぱり伏せられた沖田の睫毛が頬に落とした影に山崎はなんともいえない気持ちになってどうか沖田とずっと永遠に一緒にいれますようにとなんとなく祈ってみた。 |